IPv4とIPv6 — 教室が満席になったので、体育館へ
インターネットにつながる機器には、それぞれIPアドレスという席番号が割り当てられます。今も主流の IPv4 の席は、全部で 約43億。1980年代には「使い切るはずがない」数でした。
ところがパソコンが家庭に入り、全員がスマホを持ち、家電までネットにつながった結果、席はとっくに足りなくなっています。図1の教室で年代を進めて、どうやって席が埋まり、どうしのいで、どこへ引っ越そうとしているのかを見てください。
体育館の本当の広さは、その 約7.9穣倍
43億は、なぜ足りないのか
IPv4 のアドレスは 32ビット、つまり0と1を32個並べた数です。組み合わせは 232 = 約43億通り。世界人口より少ないうえに、1人がスマホ・パソコン・ゲーム機と何台も持っています。
しかも43億をそのまま配れるわけではありません。社内用・実験用・マルチキャスト用などに最初から取り置かれた席があり(図1のグレー)、さらに初期に大きな塊で配りすぎた名残もあります。2011年、住所を配る大元(IANA)の在庫が尽き、以降は地域ごとに順に枯渇していきました。
NATは「相席」でしのいでいる
今も IPv4 が使えているのは、NAT のおかげです。家のルーターが1つの席を家族全員で相席させ、外から見ると全員が同じアドレスに見えるようにしています。図1の4ステップ目がこれです。
ただし相席には代償があります。外から特定の機器に直接話しかけられないので、ビデオ通話やゲームの対戦では抜け道を工夫する必要があります。通信会社の中でさらに相席を重ねる(キャリアグレードNAT)と、誰がどの通信をしたのかの追跡も難しくなります。
IPv6 — 128ビットの体育館
IPv6 はアドレスを 128ビットに広げました。ビットが4倍なのではなく、組み合わせが 296 倍です。数にすると 約340澗(かん) ―― 3.4 のあとに0が38個続きます。地球上の砂粒すべてに配ってもまだ余る数で、相席の必要そのものがなくなります。
その代わり、アドレスは長くなりました。16進数4桁のブロックを8つ、コロンでつないで書きます。そのままでは読めないので、2つの省略ルールがあります。図2で順に適用してみてください。
一斉には引っ越せない
IPv4 と IPv6 には互換性がありません。教室と体育館は別の建物で、廊下でつながっているわけではないのです。そのため現在は、多くの機器が両方のアドレスを同時に持つ(デュアルスタック)形で、相手に合わせて使い分けています。
スマホの設定画面を開くと、IPv4 と並んで 2001: や 240b: で始まる長いアドレスが表示されていることがあります。それが体育館の席です。引っ越しは、すでに半分ほど進んでいるのです。
- IPv4
- 32ビットのアドレス。約43億通り。192.168.0.1 のように書く。
- IPv6
- 128ビットのアドレス。約340澗通り。16進数8ブロックで書く。
- アドレス枯渇
- 新しく配れるIPv4アドレスの在庫が尽きること。大元では2011年に起きた。
- NAT
- 1つのアドレスを複数の機器で共有する仕組み。枯渇をしのぐ相席。
- デュアルスタック
- IPv4とIPv6の両方のアドレスを持ち、相手に応じて使い分けること。
まとめ
IPv4 の席は 約43億。世界中の機器を座らせるには足りず、NATの相席でなんとか回しています。IPv6 は席を 296 倍に広げ、相席そのものを不要にしました。アドレスは長くなりましたが、先頭の0を省く・連続する0を :: にまとめるの2つを覚えれば読めます。