DHCP — Wi-Fiにつないだ瞬間のチェックイン手続き
カフェのWi-Fiにつないだ瞬間、あなたのスマホは自分のIPアドレスを知りません。住所がなければ、どんな通信も始められない — のに、数秒後には普通にネットが使えています。裏側で自動チェックインの手続きが済んでいるからです。
その手続きがDHCP。ネットワークを「ホテル」、IPアドレスを「客室の鍵」、DHCPサーバーを「フロント」だと思ってください。下の図1で、チェックインからチェックアウトまでを順に追えます。
鍵は「もらう」のではなく「借りる」
図1の4往復 — DISCOVER、OFFER、REQUEST、ACK — は頭文字をとってDORAと呼ばれます。注目してほしいのは、最後にもらうのがあくまで期限つきの鍵(リース)だという点です。ホテルの部屋を「買う」客がいないのと同じで、IPアドレスは一定時間だけ借りるものなのです。
この「借り物」方式が効くのは、IPアドレスの数に限りがあるからです。カフェのWi-Fiには1日に何百人も出入りしますが、同時にいるのはせいぜい数十人。客が帰るたびに鍵がフロントに戻り、次の客に使い回されるので、部屋数(アドレス数)が人数より少なくても回り続けます。
もう1つの見どころは、最初の叫び(DISCOVER)がブロードキャスト=館内放送だという点です。チェックイン前のスマホはフロントの場所(DHCPサーバーのIP)すら知りません。「誰か聞いてたら返事して!」と全員に向かって叫ぶしかない — 住所がない状態から手続きを始めるための、理にかなった工夫です。
- DHCP
- Dynamic Host Configuration Protocol。IPアドレスなどの設定を自動で配る仕組み。
- リース
- IPアドレスの貸出期間。期限の半分が過ぎると端末は自動で延長を申請する。
- ブロードキャスト
- ネットワーク内の全員に届く一斉送信。宛先を知らなくても叫べる館内放送。
まとめ
DHCPは「館内放送で叫ぶ → 空き部屋を提案される → お願いする → 期限つきの鍵をもらう」というチェックインの自動化です。あなたが今日カフェでWi-Fiを使えたのは、この4往復が一瞬で済んでいたから。家のルーターの設定画面で「DHCPリース時間: 24時間」という項目を見つけたら、それは「鍵の貸出期限」のことだったのです。