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DHCP — Wi-Fiにつないだ瞬間のチェックイン手続き

ネットワーク 2026.06.12 公開 読了 約10分

カフェのWi-Fiにつないだ瞬間、あなたのスマホは自分のIPアドレスを知りません。住所がなければ、どんな通信も始められない — のに、数秒後には普通にネットが使えています。裏側で自動チェックインの手続きが済んでいるからです。

その手続きがDHCP。ネットワークを「ホテル」、IPアドレスを「客室の鍵」、DHCPサーバーを「フロント」だと思ってください。下の図1で、チェックインからチェックアウトまでを順に追えます。

ROOM BOARD — IPアドレスプール(フロントの空室ボード)
.101使用中
.102空室
.103使用中
.104空室
CHECK-IN — あなたのスマホとフロントのやりとり
あなたのスマホ
IP: なし
DHCPサーバー(フロント)
192.168.1.1
STEP 1 / 8
つながったのに、話せない
Wi-Fiの電波にはつながりました。でもこの時点で、スマホはまだ自分のIPアドレスを持っていません。住所のない人が手紙を出せないように、IPがなければWebもLINEも始められません。まずは住所をもらう手続きが必要です。
図1 — DHCPのチェックイン(DISCOVER〜ACK)とチェックアウト

鍵は「もらう」のではなく「借りる」

図1の4往復 — DISCOVER、OFFER、REQUEST、ACK — は頭文字をとってDORAと呼ばれます。注目してほしいのは、最後にもらうのがあくまで期限つきの鍵(リース)だという点です。ホテルの部屋を「買う」客がいないのと同じで、IPアドレスは一定時間だけ借りるものなのです。

この「借り物」方式が効くのは、IPアドレスの数に限りがあるからです。カフェのWi-Fiには1日に何百人も出入りしますが、同時にいるのはせいぜい数十人。客が帰るたびに鍵がフロントに戻り、次の客に使い回されるので、部屋数(アドレス数)が人数より少なくても回り続けます。

もう1つの見どころは、最初の叫び(DISCOVER)がブロードキャスト=館内放送だという点です。チェックイン前のスマホはフロントの場所(DHCPサーバーのIP)すら知りません。「誰か聞いてたら返事して!」と全員に向かって叫ぶしかない — 住所がない状態から手続きを始めるための、理にかなった工夫です。

用語ミニ辞書
DHCP
Dynamic Host Configuration Protocol。IPアドレスなどの設定を自動で配る仕組み。
リース
IPアドレスの貸出期間。期限の半分が過ぎると端末は自動で延長を申請する。
ブロードキャスト
ネットワーク内の全員に届く一斉送信。宛先を知らなくても叫べる館内放送。

まとめ

DHCPは「館内放送で叫ぶ → 空き部屋を提案される → お願いする → 期限つきの鍵をもらう」というチェックインの自動化です。あなたが今日カフェでWi-Fiを使えたのは、この4往復が一瞬で済んでいたから。家のルーターの設定画面で「DHCPリース時間: 24時間」という項目を見つけたら、それは「鍵の貸出期限」のことだったのです。